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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)1344号 判決 1949年12月08日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人今西貞夫上告趣意第一点について。

しかし、営利を目的とすることは、物價統制令第三條の犯罪構成要件たる事実すなわち罪となるべき事実ではなく、営利を目的としないことは、單に同條の適用を排除する事由たるに過ぎない。から(同令一一條)、旧刑訴三六〇條二項にいわゆる「法律上犯罪の成立を阻却すべき原由」に当るわけである。從ってかゝる営利目的のないことの主張があった場合でも判示においてその目的の有無につき判断を示すを以て足り、その証拠を掲げなければならぬものではない。

されば、原判決が所論営利の目的のあることの証拠を示さなかったからといって犯罪事実と証拠との間にくいちがい又は理由に不備があるとはいえない。それ故に所論は採ることができない。

同第二点について。

しかし、原審公判調書における所論摘示の被告人の供述は、判示第二の(一)(二)の買受け及び販賣の事実を認めた上これを為すに至った経緯に関するものであって売買を否認した趣旨でないこと同公判調書の全体を通じて明らかであるから、原判決には所論のようなくいちがいは存しない。それ故所論は採ることができない。

同第三点について。

所論昭和二三年物價廳告示第四〇〇号中の一において肥料配給公團販賣價格の統制額として省線等各駅着貨車乗渡又は主要港その他の本船船側等渡における硫酸アンモニア正味三七・五瓩入一叺当に対する價格を金二四三円七五銭と規定していることは所論のとおりである。しかし同告示には肥料配給公團及び指定取扱業者以外の者が販賣する場合の價格もこの告示に定める價格を超えることはできないと規定し且つ肥料配給公團が指定肥料取扱業者にその取扱業者の藏置所渡で賣渡す場合及び指定肥料取扱業者の販賣價格(内容量目三七・五瓩当り取扱手数料六円加算)の外、統制額は同告示一のただ一種を規定するに過ぎない。されば肥料配給公團及び指定肥料取扱業者以外の者が販賣する場合の肥料統制額は同告示一所定の一種に過ぎないものと言わなければならない。されば、原判決が超過額の計算に当り所論の運賃を加算しなかったのは当然であって、これを目して法令の適用を誤ったとはいえない。

本論旨も採ることができない。

同第四点について。

しかし、原判決は、その法律適用の冒頭の箇所において所論摘示のごとく「被告人の判示行為」と判示し從って判示第二の行為についても法令の適用を為し、訓示第一の所為のみを連続犯であると説明したものであるから、判示第二の(一)(二)の各箇の所為並びに判示第一の連続の行為を併合罪として処断したのは正当であって、原判決には所論の違法は存じない。

本論旨も採るを得ない。

よって旧刑訴四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

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